2016年7月5日火曜日

祖父の気持ち(その1)

私が仕事で使っている物の中に、先代の祖父が長年愛用していた、キャビネットがあります。
前面に扉が左右二つあり、片方が曇りガラスになっていて、下には引き出しもあります。
経年使用のため、無垢板もそれなりに味が出ています。
 
主に書類や衛生材料を入れて使っていたようですが、祖父が亡くなってからその扉を開けてみると、筆で書いた言葉が壁に貼り付けてありました。
その一つは『八十五歳まで頑張る 』
昭和37年の元日に書かれたものです。
祖父が68歳、私が8歳の時です。
祖父と私はちょうど60歳違うから、計算がしやすいです。
17年後の85歳までは、仕事を続けようと考えていたようです。

 
 もう一つは、『金婚式』『昭和41年10月が金婚式』
祖父が72歳の時が金婚式だったようです。
ということは、22歳で結婚したことになります。
祖母は1歳年上で、84歳で亡くなりました。

これらの文字から、祖父の仕事と家庭に対する気持ちが、よく伝わってきます。


こうして過去を振り返ってみると、私が祖父のあとを継ごうと決心した時、祖父はちょうど85歳だったようです。
奇しくも祖父が仕事を辞めようとした年と、私が資格を取るために学校に行き始めた年が、偶然重なったのです。
その時から祖父は、私が資格を取って帰って来るまで、仕事を辞めないで老骨に鞭打って接骨院を続けていてくれました。
そして私が帰ってからさらに一年半の間、私に仕事を教えてその半年後に亡くなりました。
満89歳でした。

祖父がモットーとしていた言葉に、『感謝・忍耐・努力』があります。
私が学校に通い始めた年に書かれたものです。
長男が生まれた年月とも重なります。


祖父が亡くなり、35年近くが経った今でも、『昔先代の先生に診てもらったから』と来院する患者さんが後を絶ちません。

感謝です。

これらは皆、大切な祖父の形見の一つです。

(先生さん)

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