2016年8月10日水曜日

祖父の手紙(その3)

祖父から届いた手紙には、他にこんなものもあります。

玉磨かざれば光なし
人学ばざれば智なし
努力は成功の基なり
校規をよく守ってよく勉強すること
長上の命に従い反抗心は禁物なり
怒りは身を滅ぼす基なり
忍耐力を養うこと

祖父74歳

利明君

私が中学高校の頃には、学生運動が盛んで、その当時極貧生活を送っていた親友の一人は、政治意識に目覚め、私にその熱い思いをよく話してくれたものでした。
私はといえば、思想や政治よりも自由に憧れ、権力で縛り付ける親や学校に反抗したものです。
しかしながら、その彼のあまりにも貧しい生活環境を目の当たりにし、その環境の中から生まれた彼の考え方が、恵まれた環境に育った私にとってのトラウマとなり、将来家を飛び出し、ドロップアウトをしていくことになったのです。
高校を卒業して、すぐに家を出て大阪に向かった時には、釜が崎に入ろうと考えていました。
でもその思いはすぐには果たせず、それから7年後安定した職場を辞めて、横浜の寿町に入ることによって思いを遂げることができました。

その親友とは数年前に再会しました。
その時に彼が、胸の内を打ち明けてくれたことがあります。
それは私が高校を卒業した時に、何のあてもなく家を出て行くことに強く反対したのですが、その反対したことが彼のトラウマとなって、それからの人生において、そのことをずっと引きずっていたそうです。
彼もその後、しばらくして故郷を離れました。

彼は現在千葉県で、議員さんになっています。

このような私の考えや行為を、その当時祖父は察していたらしく、このような内容の手紙を度々手渡してくれていたのです。

 
金一万円同封してあるゆえ、有効に使うよう
正直は一生の宝、間違った心は絶対禁物なり
 
嘘をつく人とは、必然的に心が通わなくなるものです。
 
(先生さん)
 


0 件のコメント:

コメントを投稿